第4回 野生動物写真コンテスト 入賞作品(平成23年度)

入賞作品が決定しました!

 今回のコンテストでは、全国から素晴らしい作品を多数ご応募いただきました。誠にありがとうございました。
 厳正な審査の結果、応募作品の中から選ばれた入賞作品を発表いたします。
 入賞者のお名前は、敬称を略させていただきました。


【総評】
 平成23年度野生動物写真コンテストの募集期間は、平成23年7月1日~平成24年1月10日迄で、募集総数1988点、応募者数は593人でした。前年より約300点多くの応募がありました。
 作品内容は前年に比べると少々落ちるような気がしましたが、今までにない珍しい種類の応募も多々入っておりました。毎年のコンテストの度に日本中の動物写真が集まるのが楽しみです。作品の数も内容も、レベルの向上もそれなりに優秀なものが多く応募されていますが、今一つ、動物の場合は撮影しようと思ったら時間をかけて(時間をかければ良いとばかりも言えませんが)被写体をよく観察し、撮影場所、位置、方向をよく考え、ここぞと思う瞬間に確実にシャッターを押すことが肝要です。
 デジタルカメラの進歩は驚くほどで、シャッターを押せば全てが完全に合い、作品が出来上がり、後は撮影者の被写体に対する捉え方、センス一つで作品の善し悪しが決まる次第となりました。どうぞ、大いに頑張ってより良い作品に挑戦し、応募されますようお待ちしております。

審査委員長 田中 光常

| 最優秀賞・環境大臣賞 | 優秀賞 | 入選 | 子ども部門賞 | 佳作 |

最優秀賞・環境大臣賞(1点)

「群がるカップル」(アオイトトンボ)

最優秀賞・環境大臣賞

群がるカップル」(アオイトトンボ)
撮影地:北海道恵庭市
撮影者:田中 康夫

<講評>
爽やかな緑の茎にたくさんのイトトンボが美しく並んでいます。空の穏やかな色合いが珍しい集団の営みを優しくつつんでいます。
これほど多くのトンボたち全員にピントを合せるためには、カメラを並行にしてシャッターを押すことが大切であり、作者の気持ちが伝わってきます。

優秀賞(3点)

「夫婦ヘビ」(シマヘビ)

里地里山里海部門賞・環境省自然環境局長賞

「夫婦ヘビ」(シマヘビ)
撮影地:山口県柳井市
撮影者:中村 信明

<講評>
ヘビと云えば恐ろしく気味の悪いものと多くの人は思っている事でしょう。でもこの二匹の仲睦まじい姿、同じ方を向いた頭の格好や溢れるばかりの愛ある姿に思わず優しい心で眺めてしまいました。ヘビの姿にピントが合い、色彩も恐ろしさもなく、このように優しさが溢れていると、見ていて嫌悪感無く不思議な気持ちになります。

「緊急事態」(アオバト)
「緊急事態」(アオバト)
撮影地:北海道鹿部町
撮影者:川上 幸男

<講評>
「緊急事態」とはちょっと大げさだと思いますが、アオバトは不思議なトリで水とか塩分を求めることがあるので、海岸の岩場を訪れることがよくあり、海が荒れる時はこのような状況が見られるようです。画面いっぱいに飛び散る波しぶきに驚くアオバトの姿態と、激しく飛び散った波にピントを合わせ、両者の決定的な瞬間をタイミング良く捉えました。

自然公園財団理事長賞「し・あ・わ・せ~」(エゾフクロウ)
タイトル
撮影地:北海道音更町
撮影者:大石 由紀子

<講評>
フクロウは夜行性ですが、太陽の輝く日中、美しい黄葉の中で仲良く睦み合っています。
親子なのか夫婦なのか分かりませんが、私も以前同じような野生のアメリカフクロウの親子を写したことがあります。画面いっぱいに広がる黄葉の色彩とフクロウ二羽、止まっている枝にもピントが行き届き、楽しそうな二羽の様子を見せてくれました。

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入選(10点)

「飛沫」(ハクチョウ)
「飛沫」(ハクチョウ)
撮影地:山形県酒田市
撮影者:佐々木 吉治

<講評>
ハクチョウの水浴びの瞬間を的確に捉えています。羽ばたく勢いで飛び上がる水柱、バックの暗部を打ち消すばかりの水しぶきの数々、全てにピントが合い元気溢れる表情と叩いた両翼の力強い迫力等、夕陽が落ちた後なのか淡い残照が水面を一色に染めた中で、見事な瞬間を写しとりました。

「生命の神秘」(ヨツスジハナカミキリ)
「生命の神秘」(ヨツスジハナカミキリ)
撮影地:静岡県森町
撮影者:宮村 博明

<講評>
満開の紫陽花の美しい萼に囲まれた中心の、コバルト色の花蕊の上の最高の特等席に、薄いカバ色のヨツスジハナカミキリがちょこんと重なって占領している姿が愉快です。カバ色の昆虫とコバルト色の花の隅々までピントがあい、バックの若葉をぼかし、美しい画面をつくっています。

「見つめないで」(ツキノワグマ)
「見つめないで」(ツキノワグマ)
撮影地:岩手県・五葉山県立自然公園
撮影者:鈴木 靖博

<講評>
大木の根元に寄り掛かって寝ころんでいる母グマが、可愛い子グマたちをお腹にのっけて憩っている素晴らしい光景を捉えています。
良くぞこのような場面を見つけて写せたと感嘆します。望遠レンズで遠くから写したものと思いますが、子連れのクマは気が荒いので充分な注意が肝要です。面白い構図といい、真っ黒な毛艶、ピント、露出何れも申し分なく、特に作者を意識して睨んだ目の光をキャッチしたことは最高でした。

「奇跡の白猿」(ニホンザル)
「奇跡の白猿」(ニホンザル)
撮影地:山形県米沢市
撮影者:黒田 清美

<講評>
 白いサルは極めて珍しく、私も白色の動物を集めた時がありましたが、結局サルの白色は写せませんでした。多分アルビノのたぐいと思いますが、目が赤くないのが不思議です。
白色で群れの中にいると目立つので不利、長生きは難しいと云われています。このように白色の質感を見せるにはピントや露出が的確でなければ無理です。また、まわりの枝にもピントが合っているので、白い毛並みの質感を際だてるのに一役かっています。

「群翔」(ハクチョウ)
「群翔」(ハクチョウ)
撮影地:福島県いわき市
撮影者:中川 秀男

<講評>
コバルト一色の美しい空中をハクチョウたちが群れて飛んでいる姿ですが、二つのVの字にきれいに並んだ群れが上下にかたまって飛翔する、美しく不思議な構図になっています。全てのハクチョウにピントが合ったところと、シャッター速度が少し遅かったためにそれぞれの翼の端がブレた航跡とが重なり合って動きと正確さが現れ、青空とも相俟って素晴らしいハクチョウの群翔の画面になりました。

「とれたわよ」(コサギ)
「とれたわよ」(コサギ)
撮影地:京都府京都市
撮影者:塩見 芳隆

<講評>
太陽の光りの中、両翼を広げやっと捕まえたばかりのサカナをくわえて安全な場所へ移動しようと片足をあげて急いでいるコサギの姿ですが、打ち寄せる荒波を見ると簡単ではなかったのでしょう、よくぞ捕獲できたと喜んでいる姿が窺い知れます。コサギとサカナのピントもよく、砕け散る波の状況も、全ての色彩も感情が現れていました。

「木登り」(ケナガネズミ)
「木登り」(ケナガネズミ)
撮影地:沖縄県国頭村
撮影者:名嘉 一史

<講評>
ケナガネズミは大変珍しく、なかなか見つからないネズミの仲間だと思います。私も以前、奄美大島で真夜中に写しましたが、あまりに大型で驚きました。見たところまだ若いネズミのようです。とても尾が長く先端の白いところが特徴なのですが、途中で切れてしまったのが残念です。ヒゲ、目、全身の毛、尾等にピントが合っていて体の色彩、毛並みもはっきりして、バックの夜の感じもよく出ています。左手の木の枝もこの場面をよく説明していますが、登っている木肌の露出が不足だったのが残念でした。

「次の世代へ ~つなぐ命のリレー~」(ウミウシ)
「次の世代へ ~つなぐ命のリレー~」(ウミウシ)
撮影地:鹿児島県枕崎市
撮影者:糸満 尚貴

<講評>
ウミウシは海の中の軟体動物、巻き貝の仲間で、約200種もあるとのこと、雌雄同体が多いそうです。撮影された二体は、大きい方がオスとなるものでしょう。花形の触覚がある下部のほうが尾部で、メスは反対をむいて仲良く並んでいます。なかなか見つけにくいものと思われますが、クローズアップで色彩も美しく、合わせ難い体表ですが確実に写されています。画面の左右の空間は被写体の左側よりも右側を多くとった方が良いかと思います。

「子守中」(コモリグモ)
「子守中」(コモリグモ)
撮影地:栃木県那須塩原市
撮影者:室井 敦彦

<講評>
背中にたくさんの子供をのせて歩くのでコモリグモと呼ばれていますが、実はドクグモです。
でも毒はほんの少ししか持たず、田圃に多くいるので、タグモとも呼ばれています。ドクグモは約60種ほどいるそうです。
あまり気持ちのいい姿ではありませんが、調べてみると子煩悩なクモです。画面を接写でアップに写し、全てにピントが行き亘っているので迫力満点恐ろしい姿に映りました。

「KISS TO YOU」(キタキツネ)
「KISS TO YOU」(キタキツネ)
撮影地:北海道羅臼岳山麓
撮影者:須田 康

<講評>
昼寝中の子ギツネに母親がそっと口づけしています。片目をつぶった子ギツネの表情が可愛いのですが、母親の口元からちょっとベロが出ていたらもっとよかったと思います。
親子のピントも確かでしたし、バックの緑の草が優しく親子の情景にマッチしています。

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子ども部門賞(5点)

田中光常賞「海の中の世界」(チョウハン)
田中光常賞「海の中の世界」(チョウハン)
撮影地:沖縄県名護市
畔栁 りか(10歳)
「アブラゼミの羽化」(アブラゼミ)
「アブラゼミの羽化」(アブラゼミ)
撮影地:東京都板橋区
霞 壮志(14歳)
「新しい世界へ!!」(オニヤンマ)
「新しい世界へ!!」(オニヤンマ)
撮影地:富山県砺波市
鶴居 遥花(10歳)
「湿原に、出現!」(エゾシカ)
「湿原に、出現!」(エゾシカ)
撮影地:釧路湿原国立公園
高橋 充(13歳)

<講評>

「飛翔」(チョウゲンボウ)
「飛翔」(チョウゲンボウ)
撮影地:静岡県富士宮市
矢崎 未來(10歳)

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佳作佳作(21点)

ジムグリの捕食(ジムグリ)
ジムグリの捕食(ジムグリ)
木島 宏
お口の掃除(ハタ、アカスジモエビ)
お口の掃除(ハタ、アカスジモエビ)
笠原 近一
蛙の幼稚園(トノサマガエル)
蛙の幼稚園(トノサマガエル)
三路 修作
母なる川へ(サクラマス)
母なる川へ(サクラマス)
前田 賢一
アオサギのコートシップディスプレイ(アオサギ)
アオサギのコートシップディスプレイ(アオサギ)
内海 千樫
子育て(サンコウチョウ)
子育て(サンコウチョウ)
水野 紘一
暁の乱舞(マガン)
暁の乱舞(マガン)
岩渕 靖
奈落(キンメモドキ)
奈落(キンメモドキ)
大倉 寛史
お散歩(カマキリ)
お散歩(カマキリ
岡本 忠雄
恋の季節(ガーベラウミウシ)
恋の季節(ガーベラウミウシ)
御園生 智
ママと一緒(カイツブリ)
ママと一緒(カイツブリ)
吉田 伸一
共食い(アカテガニ)
共食い(アカテガニ)
谷口 夋一
いたずら盛り(ホンドキツネ)
いたずら盛り(ホンドキツネ)
大野 雅之
食欲(オオヒラタシデムシ)
食欲(オオヒラタシデムシ)
山口 勇
補食(ヘラヤガラ)
補食(ヘラヤガラ)
片野 一浩
ないしょ話(エゾシマリス)
ないしょ話(エゾシマリス)
辰井 久時
生きものたちをよろしく(イタチ)
生きものたちをよろしく(イタチ)
杉浦 勝
生命を育む(モリアオガエル)
生命を育む(モリアオガエル)
上遠野 真人
タコアゲ(ミナミハンドウイルカ)
タコアゲ(ミナミハンドウイルカ)
下井 一義
「ねえ~」「なに?」(カモメ)
「ねえ~」「なに?」(カモメ)
竹村 暢恵
笑うカメムシ(アカスジキンカメムシ)
笑うカメムシ(アカスジキンカメムシ)
中村 真喜子

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「野生動物写真コンテスト~自然界に生きる野生動物たち~」は、次の皆様のご協力をいただいて開催しております。(敬称略・50音順)

  • 朝日新聞社
  • 環境省
  • キヤノンマーケティングジャパン株式会社
  • 公益信託自然保護ボランティアファンド
  • こどもエコクラブ全国事務局(財団法人日本環境協会)
  • 全日本写真連盟
  • WWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)
  • 富士フイルム株式会社