自然紹介 2022/08/29

がんばれ野鳥たち!2022【4】

今回は、7月中旬から8月上旬にかけて観察したサメビタキの子育ての様子を紹介します。

野鳥にとって、「繁殖」は「渡り」と共に次世代に命をつなぐための大事な行動です。
人間による観察や撮影行為が野鳥に大きなストレスを与え、その結果繁殖失敗となることは、観察者は絶対に避けなければならないことです。
適切な距離、節度をもって観察・撮影に臨んだことを、ここに付しておきたいと思います。

サメビタキとは・・・
全長14cm。
中部地方以北に夏鳥として渡来する、ヒタキ科の一種。
生息環境は、平地から亜高山帯の林。
飛翔昆虫を空中で捕える、フライキャッチの名手。
巣はシラビソやカラマツなどの2m~18m程の高さにある、サルオガセやウメノキゴケが付着した枝上に作る。
巣の主材はサルオガセで、小さなお椀状の形をし、産座には少量のカラマツの枯葉が敷いてある。
一度に産む卵の数は、3~5個。

サメビタキはふつう林内で生活し、渡りの時期に林縁や開けた場所に出てくるということですが、今回巣を作った場所は上高地バスターミナル脇の遊歩道沿いなので、それなりの人通りとバスの行き来がある場所です。
今回観察したサメビタキは、人を脅威とせず、むしろその存在を利用しているように思えました。

以下、時系列順に掲載しています。


7月16日 巣内で抱卵するメス

7月16日、上高地バスターミナルのわきにある細いカラマツの枝先にサメビタキが巣を作っている様子が確認できました。
巣は地上7mほどにあります。


7月19日 降りしきる雨の中、じっと耐えるメス

7月19日、雨の中、メスが卵をあたためている様子が確認できました。雨に濡れながらも、抱卵を続けています。


7月26日 抱卵を続けるメス

図鑑によると、コサメビタキで12~14日の抱卵期間ということです。他のヒタキもそれくらいのものが多いのですが、サメビタキはどうなのでしょうか?


雌雄で巣の中のヒナを世話する(写真は8月3日)

7月31日に、同僚がしきりに巣の中を気にしてつついているサメビタキを確認しました。
孵化した模様です。


8月4日 黄色いくちばしのヒナを確認

8月4日に黄色いくちばしをしたヒナを1羽確認しました。目はまだ開いていません。


雄と雌

お気に入りの枝に止まる雄と雌。
ここからよくフライキャッチして虫をとっていました。
左がメス、右がオスでしょうか。
すぐ横にヒナがいる巣があります。


8月5日 ヒナにガを与える親鳥

親鳥がヒナにガを与えています。


8月6日 ヒナに昆虫を与える親鳥

この時期、昆虫の幼虫類はとても少なく、観察していると与えているエサのほとんどがガなどのハネのついた成虫でした。
同僚の観察では赤い実(ミヤマザクラのような)も与えていたということです。


8月6日 抱雛するメス

ヒナをあたため中のメスです。ヒナは毛が生えそろっていないため寒さに弱いので、メスが保温しています。


8月6日 ヒナと親鳥

8月6日、だいぶ成長したヒナが確認できました。


8月7日

8月7日、頭部にも羽毛が生えてきています。3羽確認できました。
同僚によると、4羽のヒナを確認できたとのことでした。


お気に入りの止まり木でストレッチする親鳥。


8月11日朝 ヒナの様子 ずいぶん大きくなりました

8月11日朝、ヒタキの幼鳥のトレードマークであるブチ模様が確認できます。
羽毛が生えそろってきました。


8月11日 ヒナと親鳥

ヒナにエサをやった直後、ヒナからフンを受け取り遠くに捨てに行く親鳥。
天敵にヒナの存在を気づかれないように、わざわざフンを離れたところに運びます。


8月11日 ヒナと親鳥

両親でヒナを見守ります。


8月11日昼過ぎ 巣内で羽ばたいてみるヒナ

8月11日昼過ぎ、巣内のヒナが羽をバタバタさせていました。しかしまだ巣立ちには早い気がしていました。
しかしその日の夕方、ヒナを確認しに行きましたが見えません。
ただ、親鳥がまだ巣に餌を運んでいたので、少なくとも1羽は残っているようでした。
(その最後のヒナも翌朝にはいませんでした。親も観察できなくなりました。)
残りのヒナたちは無事に巣立てたのか・・・
巣立ちビナはあいにく確認できませんでしたが、どうか無事に巣立っていてほしい・・・そう願わずにはいられません。

サメビタキはもうしばらく上高地で過ごし、間もなく越冬地がある南方のユーラシア大陸南部やマレーシア、フィリピンなどに渡っていきます。
無事に渡って、また来年日本に戻ってきてくれますように。

参考文献*********
『決定版 日本の野鳥 巣と卵図鑑』(小海途銀次郎著 世界文化社2011.9)
『フィールド図鑑 日本の野鳥 第二版』(叶内拓哉 水谷高英 文一総合出版 2020.7)
『山溪ハンディ図鑑7 日本の野鳥』(山と溪谷社1998.5)
『日本産鳥類の卵と巣』(内田博著 まつやま書房2019.8)
『上高地の野鳥 増補改訂版』(前田篤史著 ほおずき書籍 2018.5)


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