自然紹介 2022/11/06

がんばれ野鳥たち!2022【5】

秋。野鳥たちにとって、寒く食料の乏しい冬を越す為の備えをする季節です。渡っていく鳥、この地に留まる鳥と様々いますが、春や夏と違った種や行動が見られます。
今シーズン最後の本シリーズは、今年も秋の渡りで上高地に訪れてくれた子たちを中心に締めたいと思います。


アトリ

針葉樹の実が好物の彼ら。今年はその実りがよかったので、大きな群れを見られるかもと期待していました。その結果は……この通り。


一斉に舞い上がるアトリたち

200~300羽ほどのなかなかの数で、一斉に群れて飛ぶ様は対岸から見ても存在感たっぷり。上高地の秋を代表する渡り鳥である彼らの姿は、毎年の楽しみです。


ジョウビタキ

近年は上高地での繁殖も確認されていますが、通常見られるのは春と秋に限定され、数も少数です。カラマツが黄葉する頃に渡ってくるので、秋色カラーの体は見つけるのもなかなか骨ですが、それだけに会えた喜びはひとしお。姿はもちろん、体の向きを変えるたびに、おじぎするかのように頭を上げ下げする動きが、とってもキュートです。


カシラダカ

上高地では初めての出会いでした。名前の由来になっている頭の冠羽は、警戒時など緊張したときに立てるそうな。・・・驚かせたならごめんなさい。私が見たのは2羽だけでしたが、大抵は最低でも10〜20羽ほどの群れになっているそうです。昔は頻繁に見られたという本種は、その減少が懸念されています。


ルリビタキ

春以来、11月になってようやく出会えたこの子。頭にまだら模様が見られるので、今年生まれの若鳥だと思います。繁殖地は上高地より標高の高い場所で、そこで雪が降ったり寒くなると下りてくるため、この子が上高地に来たのは初めてのはず。さて、初の上高地はその目にどのように映っているでしょうか。


キンクロハジロ

大正池でぽつんと一羽だけで浮かんでいたこの子は、渡りの中継地として稀に訪れることがあるそうで、上高地ではなかなかお目にはかかれない水鳥です。名は体を表すといいますが、本種はオス鳥の見た目で名づけられたそうです。この子はメスですが、つぶらな金色の目はオスと一緒です。


コガラ


シジュウカラ


ヒガラ

この時期になると見られる「カラの混群」。混群と表すように、異なる種が混ざって群れになっています。しかしながら、混ざっているのはカラ類だけに留まらず、コゲラやエナガなどがいることも多々です。彼らがこの時期に混群になるのは、多様な種が集まることで、少ない餌を見つける確率が上がる、葉が落ちて鷹などの天敵に見つかりやすいため、多くの目をもつことで敵への警戒を強化できる、といった利点があるからといわれています。彼らならではの生き抜くための知恵に拍手です。

今年はシーズンを通して、出会う野鳥の数が少なかったように感じます。運やタイミングの問題であれば仕方ないのですが、野鳥自体の数が少なくなっているとしたら、それは悲しいことです。事実、カシラダカのように少なくなっている種がいるのは、彼らの過ごしやすい環境が減ってきてしまっているからでしょう。自然豊かに見える上高地も、私たち人間の目から見るより大きな変化を、彼らは感じているのかもしれません。
上高地ではこれまで約140種の野鳥が確認されています。それがいつまでも変わらず見られるよう、厳しい自然の中でも負けずに生きる野鳥たちに、「がんばれ!」とただ丸投げで言うのではなく、「君たちが生きる環境を私たちもがんばって守るから、がんばれ!」そう胸を張って言えるよう、彼らを応援していきましょう!


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