第3回 野生動物写真コンテスト 入賞作品(平成22年度)

入賞作品が決定しました!

 今回のコンテストでは、1694点におよぶ素晴らしい作品のご応募をいただきました。
 誠にありがとうございました。

 厳正な審査の結果、応募作品の中から選ばれた入賞作品を発表いたします。
 入賞者のお名前は、敬称を略させていただきました。


【総評】
 平成22年度野生動物写真コンテストの募集総数は1694点、応募者数は529人でした。回を重ねる毎に作品内容も向上し、デジタルカメラにも熟達して、見応えのある作品が多くなってきました。特に露出やピントが揃っており、作品に動きのあるもの、愛情溢れる情景など多く見られる様になりました。
 野生動物の撮影は努力と感覚・判断力が大切で、被写体に対して待機時間をかけたり、撮影位置を変えたりすることも必要だと思います。クローズアップする場合にも単に大きく写すのではなくて、例えば表情が現れた瞬間を、目の動き、手や足の動きを狙う様にします。特に親子、夫婦の場合は二匹の顔が写っているだけではなく、愛情溢れる瞬間を捉える様に努力し、根気よく待つことも大切だと思います。でも、ただ時間をかければ良いと云うものでもなく、目の前に好機が現れることもしばしばあります。その他、画角・被写体の位置取りも大切なこと、熟慮を要します。
 上位の入選作品とご自分の作品とを比較し、それに勝る傑作を作って頂きたいと思います。
 次回も素晴らしい作品の応募をお待ちしております。

審査委員長 田中 光常

| 最優秀賞・環境大臣賞 | 優秀賞 | 入選 | 子ども部門賞 | 佳作 |

最優秀賞・環境大臣賞(1点)

「飛沫をあげて」(オオワシ)
「飛沫をあげて」(オオワシ)
撮影地:岩手県・大船渡湾沖
撮影者:鈴木 靖博

<講評>
 トリの王者オオワシが、獲物を足に勢いよく海面を蹴立てて舞い上がる姿は何にも増して立派です。オオワシのように近寄りにくい鳥類は、小型の乗合船上かチャーター船上から手持ちで写すしかないと思います。努力は勿論、最高のチャンスに恵まれ、望遠レンズの扱いにも優れた作者だと思います。
 天候もよく、トリのピントも、飛び散る水しぶきも形よく傑作でした。

優秀賞(3点)

里地里山里海部門賞・環境省自然環境局長賞「飛翔の群れ」(ハマシギ)
里地里山里海部門賞・環境省自然環境局長賞「飛翔の群れ」(ハマシギ)
撮影地:石川県かほく市
撮影者:野宮 昭治

<講評>
 よくぞまとまったハマシギの飛翔の姿! 青空一杯の姿は見事というより他にありません。
 荒立つ波との組み合わせの素晴らしさも目を見張る光景です。暗い色彩のトリの群れに、荒れた白波の美しさが互いに力強さを出し合って見事です。

子ども部門賞・田中光常賞「大成功」(ハヤブサ)
子ども部門賞・田中光常賞「大成功」(ハヤブサ)
撮影地:神奈川県・江ノ島
撮影者:秋山 徹(13歳)

<講評>
 獲物をくわえて飛翔する姿を見事にとらえました。鋭く見据える目の輝き、翼と尾羽の広がり。バックの草木のボケ具合も的確で、トリの姿を明確に浮き上がらせて見応えがありました。作者が13歳の中学生という事ですが、今後に大いに期待しています。

自然公園財団理事長賞「早くおいで」(エゾシカ)
自然公園財団理事長賞「早くおいで」(エゾシカ)
撮影地:釧路湿原国立公園
撮影者:東等 和子

<講評>
 釧路湿原を俯瞰したエゾシカの群れは、撮影場所の選定も最高でした。私も随分努力して駆け回ったものですが、このような場所は見つけられませんでした。
 シカの群れの進行位置が的確で素晴らしく、群れから離れた1頭の子ジカの姿を気遣うように振り向く母親の横顔も情緒があって良かったと思います。画面下の日陰になった半島の先端部分も、全体の画面を安定させています。

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入選(9点)

「大成功」(ミサゴ)
「大成功」(ミサゴ)
撮影地:宮崎県小林市
撮影者:谷村 龍生

<講評>
  ミサゴがサカナを捕獲するのを見ていると、獲物が大きすぎて水中に一緒に引っぱり込まれているのをよく見かけますが、このミサゴは翼をばたつかせ乍もサカナをしっかり片足でつかんで飛び立ち、凛々しい姿を見せています。トリの姿と蹴散らした水しぶきのピントの良さ、前方に余裕を持たせた空間も作画上重要なポイントですし、バックの水面の暗部も見事です。

「吸収」(ヨコヅナサシガメ)
「吸収」(ヨコヅナサシガメ)
撮影地:長崎県長崎市
撮影者:岡部 誠二

<講評>
 羽化したばかりの不思議な色彩と形容に、初めて見るものとしてびっくりしました。
 これ程までに羽化の前後で色が変わっていることに驚かされます。バックの薄緑色が単純な色彩にボケていて、羽化の状況を明確に浮き上がらせています。被写体の全体と、かじりついた一枚の葉とが立体的にピント良く説明に役立っています。

「カモシカの親子」(ニホンカモシカ)
「カモシカの親子」(ニホンカモシカ)
撮影地:下北半島国定公園
撮影者:秋山 知伸

<講評>
 カモシカは人間が近づいても逃げない事が間々あります。私も1メートル位の至近距離で1時間位お付き合いしたことがあります。
 子供が一緒の時は警戒するのではと思いますが、静かに人間の出方を見極めていたのでしょう。撮影者の優しい心がカモシカの親子に伝わったのでしょう。親子の色彩と確実なピントで穏やかな美しい作品です。

「眼光」(シマヘビ)
「眼光」(シマヘビ)
撮影地:明治の森箕面国定公園
撮影者:堀 英彦

<講評>
 眼光鋭くカエルを飲み込み2本の足をくわえた場面を、非常に良いタイミングで捉えました。目を輝かせて満足そうなシマヘビの表情が素晴らしく、ヘビ特有の蛇行する姿も必要な形のみに纏め、石のがらがらした地面に対して、ヘビのもつ特有の質感を表しています。顔と目と首の曲がり具合の中心に確実にピントが合い、バックの冷たい色のボケ方が殺伐とした感じを和らげています。

「アオリイカの産卵」(アオリイカ)
「アオリイカの産卵」(アオリイカ)
撮影地:富士箱根伊豆国立公園
撮影者:河本 新二

<講評>
  産卵を終え、大きな目を輝かせ卵塊を守っている姿は健気です。産みつけたばかりの卵の前で直立不動の姿で頑張っていますが、足先を卵に添えて安否を気遣っているようです。
 重要な部分が全て白色ですが、露出が的確だったので束ねた足の状態がよく分かり、卵との差がはっきり区別されています。バックの黒い枝がこの環境を取り囲んでいるようです。海中でありながら全ての露出とピントが揃いました。

「クリーニング」(エソ、ベラ)
「クリーニング」(エソ、ベラ)
撮影地:静岡県沼津市
撮影者:御園生 智

<講評>
  暗い環境の海中でごついサカナ・エソが、か細いベラに寄生虫を取ってもらい口を開けて気持ち良さそうです。力強い画面の中、海中のドラマが映し出されています。被写体の周囲が暗いのでストロボで二匹のサカナの姿を浮き彫りにさせ、強烈な感じが現われています。暗部をバックに、二匹のサカナの色彩とピントが確実で、海中での撮影を成功させました。

「小さな命」(モノサシトンボ)
「小さな命」(モノサシトンボ)
撮影地:福島県二本松市
撮影者:岩下 一男

<講評>
  水面に浮かんだ枯れ葉に群がるイトトンボ(モノサシトンボ?)は目下産卵中です。オスの胴体の長く美しい色彩は定規のようです。
 頭・胴体に比べて尾部の細長さがバックの黒色に映えて、美しい模様を描いています。
 水に映るトンボたちの陰が枯れ葉を下から支えているようにも見えます。小さな昆虫の世界の命の一端が、黒いバックの中に息づいています。

「いい気持ち」(カワネズミ)
「いい気持ち」(カワネズミ)
撮影地:長野県安曇野市
撮影者:大槻 憲吾

<講評>
  大変珍しい動物で私は初めて見ました。斜め上からカワネズミの泳いでいる姿を写していて、頭の先から背中の毛先まで克明に描写されています。水面をかき分けて進む時の波形が美しく揺らいでいます。この状況から、相手を驚かさずに静かに写している作者の態度が窺えます。

「絆」(ツシマヤマネコ)
「絆」(ツシマヤマネコ)
撮影地:壱岐対馬国定公園
撮影者:川口 誠

<講評>
 何日も夜を徹して頑張らなくてはこのような場面には出会えないでしょう。特に親子の穏やかな睦まじい表情を写すことは難しく、素晴らしい情景です。作者の落ち着いた優しい気持ちが伝わってくるようです。ストロボを使用しているのでしょうが、親子の仕草が自然で落ち着いていて、不思議に思います。

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子ども部門賞(4点)

「こんにちは」(ムササビ)
「こんにちは」(ムササビ)
撮影地:長野県軽井沢町
内山 健太朗(13歳)
「魚を持って」(ミサゴ)
「魚を持って」(ミサゴ)
撮影地:岡山県倉敷市
川村 晃弘(12歳)
「花のみつをすって」(アゲハチョウ)
「花のみつをすって」(アゲハチョウ)
撮影地:山梨県甲州市
阪口 悠宇(10歳)
「キツネのうしろ姿」(キタキツネ)
「キツネのうしろ姿」(キタキツネ)
撮影地:北海道羽幌町
野宮 玲那(12歳)

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佳作(19点)

カワセミの子育て(カワセミ)
カワセミの子育て(カワセミ)
渡邊 洋
弱肉強食(スズメバチ、アブラゼミ)
弱肉強食(スズメバチ、アブラゼミ)
谷口 夋一
Royal Guard(ニホンミツバチ)
Royal Guard(ニホンミツバチ)
加藤 栄一
親子熊(ツキノワグマ)
親子熊(ツキノワグマ)
高橋 充夫
森のドラマ(クマゲラ)
森のドラマ(クマゲラ)
東海林 勇
ウルトラの顔(ウミウシカクレエビ)
ウルトラの顔(ウミウシカクレエビ)
佐野 俊次
おみやげ(サギ)
おみやげ(サギ)
城田 祥男
Red Tree(イバラカンザシ)
Red Tree(イバラカンザシ)
桑原 敏樹
キアンコウ(キアンコウ)
キアンコウ(キアンコウ)
古菅 正道
食べちゃうぞ~(エゾシマリス)
食べちゃうぞ~(エゾシマリス)
秋山 ゆき子
山原の親子(ヤンバルクイナ)
山原の親子(ヤンバルクイナ)
稲福 政吉
大物をゲット(ミサゴ)
大物をゲット(ミサゴ)
芝本 春美
冬日の森(エゾクロテン)
冬日の森(エゾクロテン)
庄子 嘉子
ひと休み(カマキリ)
ひと休み(カマキリ)
金益 隆志
マユタテアカネの舞う湿原(マユタテアカネ)
マユタテアカネの舞う湿原(マユタテアカネ)
一峰 法和
激突(エゾシカ)
激突(エゾシカ)
松江 潤
羽生(オニヤンマ)
羽生(オニヤンマ)
佐藤 恒雄
だいじょうぶ(モモンガ)
だいじょうぶ(モモンガ)
高橋 照子
雨に寄り添う(オガサワラオオコウモリ)
雨に寄り添う(オガサワラオオコウモリ)
野元 学

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野生動物写真コンテスト「自然界に生きる野生動物たち」は、次の皆様のご協力をいただいて開催しております。(敬称略・50音順)

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